ワタシは何度か転職活動をしています。
それらの転職活動の中でも、無謀にも会社を辞めて資格試験の勉強に専念して、見事に不合格になった直後の転職活動が、一番精神的に追い込まれていたと思います。
アルバイトをしながら最低限の生活を維持しつつ、資格試験の勉強をしていたわけですが、その期間は最大で3年と決めていました。
見事に3年がふつうに過ぎてしまいました。
自分との約束通り、どこかに就職しなければならない時期が来てしまったのです。
当初の目論見では、きちんと資格を取得してその資格を活かせる就職先に転職する姿を夢見ていたわけですが、現実は資格を手に入れることはできず、履歴書に無職の期間が残るだけとなったのです。
目指していた資格は司法書士でした。
司法書士事務所では補助士という事務員を募集しているところもあり、補助士の仕事をしながら資格取得目指していく方も多いです。
資格取得のためには、絶好の環境です。
なにせ、実践を仕事で学ぶことができるのは資格試験に必要な知識を直接学ぶことにつながり、しかも給与までもらえるわけですから。
はじめからそのような環境で資格取得の勉強に取り組めば良かったのかもしれません。
ワタシが司法書士事務所で働きながら勉強することを選択しなかったのは、勉強時間と労働時間のバランスでした。
働くということは、やはり労働時間の方を優先せざるを得ない場面がどうしても出てくるのだろうと思いました。
もちろん、資格取得を奨励する事務所もあるのでしょうが、繁忙期などは残業も必要になってるでしょう。
勉強したいけど残業が多くて時間が十分に取れず、結局時間だけが過ぎていくということだけは、避けたいと思ったのです。
ズルズルと資格を取得できずに働くことがメインになってしまう自分の姿が、想像できてしまったのです。
もうひとつの理由は、補助士の給与が安かったというのがありました。
さらに、資格を持っているものと持っていないものの身分の差が、給与に反映されている世界は、とても居心地が良さそうに思えなかったのです。
まして、試験に不合格となった今、改めて補助士として働くことはできそうにありませんでした。
手元のお金も底をついていた
資格試験を勉強していますと言えば聞こえは良さそうですが、実際はただの浪人です。
しかもいい年をしたアルバイトです。
生活を切り詰めてはいましたが、自分の時間の大半を勉強時間に充てていたので、稼げるお金は限られています。
要するに貧乏なわけです。
このころは国民年金の支払いも免除扱いになるほど困窮していました。
とにかく、はやく就職して人並みの給与をもらえる仕事をしなくては。
しかし、求人内容は厳しいものばかりでした。
月給で15万円、18万円という感じのものばかりです。
しかも仕事の内容は良く分からない。
自然と給与の高いものに目が行くようになっていきます。
すると、その職種は新卒で入社したときと同じ営業職だけが残ったのです。
営業しかないのか…
辛かった営業時代が思い出されてきます。
- 果てしなく続く残業
- 上司が帰るまで帰れない雰囲気
- 契約ができなければヒト扱いはされない
- 休日出勤は当たり前
- 営業成績があがらないダメ社員は休日研修でお仕置き
- 今月が良くても、月末が過ぎればまたゼロからスタート
悪いイメージばかりが思い起こされます。
働くとこの辛さばかりを経験した日々が思い出されます。
あの奴隷生活に戻るしかないのか。
でも、試験に合格できなかったんだし、なんの特徴もないワタシにはそれしかないのか…
見るからに厳しそうな業界の営業職の面接を受けてみることにしたのです。
営業の世界とは
一次面接の担当者は若い現場責任者の方のようでした。
さわやかな笑顔の奥に秘めた自信が、笑っているのに笑っていない目に表れています。
スーツ姿でもはっきり分かる鍛えられた筋肉と日に焼けた肌が活動的な印象を与えています。
一方のワタシはヨレヨレの久しぶりに着たスーツで肩を落として緊張しながら入室していくのです。
今想像するだけでも明暗がはっきり分かれすぎていて、悲しくなります。
「おはようございます」と現場責任者の大きな明るい声が部屋に響き渡ります。
「あ、おはよーございます」とワタシは小さな声で控えめに答えます。
「声がちいさいな」
もはやこの時点で全くダメでした。
そのあとも今で言うところ圧迫面接が続きます。
現場責任者は明るい大きな声で色々言うのですが、いちいち棘があるような表現で責めるように質問をしてきます。
そうです。
これです。
思い出しました。
営業会議ではひとりひとりの取り組み状況の確認を追求していくのですが、それがまさにこの圧迫感のすごい聞き取り調査なのです。
- で、どうなんだ今月行けるのか?
- 結局今月いくつ契約できるんだ?
- だからどれを契約するかって聞いてるんだよ?
そんな風に会議は続いて行くのです。
できる営業マンは、これらにハキハキ答えて行き、いつもそれ以上の結果を残していくのです。
- ウチの会社で何ができますか?
- どんなルートを持っていますか?
- 毎月のノルマがありますが達成できますか?
- どのようにしてノルマを達成していくつもりですか?
- 独自のルートがないと厳しいですよ
- 給与は実績に連動しますが大丈夫ですか?
現場責任者はドンドン質問をしてきます。
ワタシはしどろもどろになりながら答えて行きます。
途中で何を質問されて何を答えたのかも分からなくなりました。
一瞬頭の中が真っ白になったような気がしました。
当時の苦痛な営業会議を思い出していたのかもしれません。
「あなた本当に大丈夫ですか?」
最後の質問でした。
いや、質問なのか、ぼんやり別のことを考えていたワタシを心配したのかもしれません。
「あ、ハイ」
そう答えましたが、ワタシは大丈夫ではないと思っていました。
やっぱり、ワタシには営業職は無理だと思ったのでした。